時間ドライブ  前田邦晴

十年前退職という区切りに安堵し、再任用となり仕事を続けるが「いこいの家」の施設管理の5年間もあっという間に過ぎ再任用期間も終わった。 

私は退職が見え始める十年前、「60の手習い。」では退職後の趣味はなかなか身に付くものではないだろうと思った。第二の人生、趣味の生活もそれなりの準備と努力を要する。しかし、退職までの間も再任用の期間も何も出来ずに過ぎてしまった。

囲碁将棋などは相手が必要であるし、楽器や絵画などの創作活動もそれこそ楽しむための舞台装置が必要となる。考えると面倒くささが先に立ってくる。 

思案の末でもないが自分一人で身近な時間を過ごす古今変わらぬ趣味は読書であると決め、これに費やすこととした。また以前に読んだ本で、今でも印象に残っている本を再度読んでみようと決めた。 

如何にも安直な思い付きと言われそうである。本の種類は以前から好んでいた歴史小説である。歴史小説といっても史実に基づくもので、こうした内容は「時」を超え世界観を楽しめる。

以前は歴史上の諸説や故事来歴を知ることで満足したことが多かったが、それでは作家のわずかな部分を知見することに終始してしまい、読み手の自己満足を避けられない。

作者はより深いところで、その時代その時の理を見せているはずだと感じた。この事は本の読み直しを通して気付いた。しかも、2回、3回と読み直すと読む度に前回読んだ時とは別の世界にぶつかる。文庫本ではあるが全8巻を3回読んだときは3回とも異なる読書感であった。

また、全43巻を読み直した時も全く別の本を読んでいる様に深まる感覚であった。 

人生も残り少なくなって来たが、こうした時間に触れてみると目新しいものだけが新しく前向きな訳ではないことを改めて感じた。ただ、思い出に浸かってしまうのも如何なものかと思うが、自らの歩みに従い前に進む気概を常に持ち続けながらも、何れは何処かで幕を下ろすことに満足できれば良いと思う。 

滔々と過ぎる時間の旅ができれば読書という趣味もまんざらでもない。面白い幕引に繋がっていくのではないかと思う。健友40年の歴史も諸先輩方の連綿とした貴重な時間の連なりであることに敬意を表し、今後の発展を祈りたいと思う。

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